誰にも言えない

ぐずぐずの引きこもりの私。いつからこうなったのだろう。誰にも言えないから書きます。

母の味

遠い国の月子

私にとっての母の味は、ちらし寿司、コロッケ、焼き餃子。しかし、今、私はそのどれも作らない。息子の好物ではないからだ。


子供が好き嫌いを主張する歳になるまで、私は、それらを何度も作ったことがある。夫は美味しいと食べてくれたが、三人家族のうち、ひとりが気に入らない物を作る気にはならず、自然と作らなくなってしまった。特に、コロッケや餃子は手間がかかる。手間暇かけて喜ばれないのは割に合わない。


若い頃、私が実家に帰省すると、まずはちらし寿司が出てくる。コロッケや餃子は、たまにだった。考えてみると、私がこの三品を母の味として好んでいることを、ちゃんと母に伝えたことはなかったように思う。母が私の好物として捉えていたのは、とにかくちらし寿司だった。それともうひとつ、スイカだ。


早生で、四分の一や八分の一にカットしたものが、びっくりするほど高く売られている時でも、母は買ってきてくれた。もったいないのに、と思ったが、いつもそうだった。そして、大部分を私に食べさせて、父と母は、ほんの少しだけ口にした。そして「月子が帰ってきた時にだけ、ちらし寿司と、スイカを食べるのよ。」と言っていた。


同じような場面をドラマで目にした時、その記憶が蘇った。「きのう何食べた」だ。シロさんが実家に帰ると、母親が揚げ物を作る。「確かに好きだけど、俺、もうそんなに若くないのに。こんなに炭水化物ばっかり。」と困り顔になるが、ふとした時に、それを父親が楽しみにしていること、また、老父母にとっては息子が帰省した時だけのたまにのメニューなのだと知るのだ。


親心はどこも同じなのだなと思う。うちの息子にとっての母の味は何だろう。私は母のように料理上手でもないし、むしろ料理は嫌いなのだけれど、せめてもの務めと思い日々奮闘している。