誰にも言えない

ぐずぐずの引きこもりの私。いつからこうなったのだろう。誰にも言えないから書きます。

坂のない暮らし

坂のない暮らしに、ずっと憧れていた。生活圏内を、自転車で楽々移動できるような場所に住みたい。それなのに、住む場所、住む場所、坂がある所ばかり。いったいどうしてなんだろう。


子供の頃住んでいた場所は、高台にあった。長い坂を下った後、田んぼに沿ってしばらく歩いて、今度は坂を上ると小学校があった。だから、行きも帰りも、坂の上り下りをしなくてはいけない。重いランドセルを背負って、暑い日も寒い日も雨の日も40分歩く。遠かった。毎日、坂を上り下りしながら「大人になったら、坂のない所に住みたい」と子供心に思っていた。


大人になってから、何度か住まいを変えたが、どこも坂のある所だった。一番大変だったのは、結婚して最初に住んでいた社宅。周りは坂だらけだった。子供が生まれてベビーカーを押して、散歩や買い物に行く。もう本当に大変だった。背中と腰が常に痛かった。ベビーカーを押して坂を上るのはきつい。下りは下りで危なかった。


そして、今、住んでいる所もやはり同じ。どこに行くのも坂だ。緩い長い坂道を下った所に、日常生活に必要な施設が揃っている。距離だけをみれば、便利な場所だ。しかし、行きはよいよい帰りは怖い、になる。


家を構える時には、もちろんいろんな条件を夫婦で考えた。そして結果的にここを選んだのだ。私の密かな「坂のない暮らし」という希望は、優先順位をつけるとしたら、かなり下の方になってしまうから、しかたがない。


よほどのことがない限り、ここを越す予定はないので、私はとうとう坂のない所に住むことはできなかったということになる。残念だ。


そもそも、日本にはそんな場所は少ないのだろう。でも、そういう場所に住んでいる友人が実際に二人いるのだ!ひとりは都会で、ひとりは田舎のほう。訪ねたことがあるが、駅からの道は、ずっと平らで、ベランダから見える景色も見渡す限り平らだった。聞くとやはり自転車での移動が多いという。うらやましい。本当にうらやましい。


今日も坂を上りながらそんなことを思った。