誰にも言えない

ぐずぐずの引きこもりの私。いつからこうなったのだろう。誰にも言えないから書きます。

老舗眼鏡店が閉店

両親が二人ともまだ元気だったころに、買ってもらった老眼鏡がある。あれは確か、父親が新調した眼鏡を取りに行くというので、母と私も同行し、店内で待っている時だった。「月子もそろそろ必要なんでしょ。ついでだから作ったら?」と母に言われたのだった。私は老眼がそろそろ始まったところで、差し迫って必要性は感じていなかったし、今は安くて早い眼鏡屋も色々あるので、なにもわざわざここで、とは思わなかったのだが、目ざとい店員が、検査だけでも簡単ですからいかがですか?と寄ってきて、ついつい話に乗せられてしまったのだった。その眼鏡屋は、実家の最寄り駅前の商店街に昔からある、いわゆる老舗店だ。平日の昼間の店内は、ガラガラだったが、それでも長年商売が成り立っているのだがら、うちの両親のように贔屓にしている固定客が大勢いるのだろう。


あの時は、息子と二人で里帰りした時だと思うのだが、息子はその場にいなかった。なぜだかはっきりは覚えていないのだが、友達の家で遊ぶため、預けてきていたのかもしれない。とにかく、時間に縛りがなかったのと、店内で落ち着かない息子がいなかったので、私は初めての老眼鏡をその店で作ることになった。当然、支払いは自分でするつもりだったのだが、会計の段になって、母が「交通費をかけて遠い所来てくれているのだから、これくらいいいよ。」と言って、父親の眼鏡の支払いと一緒に済ませてくれた。


私はその老眼鏡を趣味の時に使っている。普段、持ち歩いたり、キッチンや洗面所など、家の要所要所にあちこちいくつもの老眼鏡を置いているが、それらは100均で買ったものだ。細かい作業が必要な趣味の時だけ、きちんと私の目に処方されたその老眼鏡を使うのだが、目の疲れが全然違うような気がしていた。


先日、妹と電話で話していて、その老舗眼鏡店が閉店したと聞いた。店主は、亡くなった私の両親と同世代だったと思う。おそらく両親は全ての眼鏡をあの店で作り、定期的に修理や調整をしてもらっていた。とてもお世話になった眼鏡店だった。閉店がどういう事情か分からないが、なんだかとても寂しい。